忘れられない~Vol.8「あんた」

1月3日に関西で大人気だった “やしきたかじん” が亡くなって、もう9ヶ月が過ぎました。

大阪出身の歌手&タレントで、上方お笑い大賞と日本有線大賞を受賞した唯一の芸能人であり、大阪で知らない人はいませんが、過去のトラブル等により、東京では仕事をしないため、ご存じない方も多いかも…。

1977年に、当時宝塚の演出家であった草野旦が、たかじんのデビュー曲『ゆめいらんかね』を聴いて、その歌唱力と作曲センスを評価し、男性として史上初めて宝塚歌劇の舞台に立ち、現在に至るまで、宝塚の舞台に立った唯一の男性でもあるんです。

コワモテが売りだった “たかじん” でしたが、コンサートになると、極度の重圧から自律神経失調症や重度の胃腸炎やノイローゼになったほどで、

客席をまともに見ることが怖いため、ステージに立つときは必ずサングラスをかけ、トーク時にステージの端から端までウロウロするのはサービスや演出ではなく、精神的に落ち着かなかったからだとも。。

ただ、それだけに彼の歌は本当に素晴らしく、その美声にふれると彼の懊悩までが垣間見られるようです。

ということで、本日の「忘れられない名曲の数々-Vol.8」は、私が妻との離別を決意し、海外に逃避した1984年に、そのたかじんがリリースした「あんた」をご紹介します。

欧陽菲菲の「ラヴ・イズ・オーヴァー」や、私も大好きな谷村新司の「Far away」を手掛けた伊藤薫により、別れた妻との想い出をベースに作られたこの歌のレコーディング中にたかじんが感極まってしまい、何度も撮り直されたのだそうです。

ちょうど、たかじんが39歳の誕生日にその前妻が急逝、直後に行われたコンサートでは、この歌の最中に泣き崩れて立ち上がれず、「次に歌うのは引退コンサートのラストの曲」と言い切るほど、たかじんにとってはこだわりのある曲だったわけですが、結局、最後までその望みは叶いませんでした。。


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男女の恋愛というものは、妥協せずに突き進めば、結局はすれ違わざるを得ないんじゃないか…。結婚を3度も経験したからというわけではありませんが、この歳になって、つくづくそう感じています。

そんな“外連味”のない勝負 ? をしたことのある人なら、うえのエピソードも当然に思え、この切ないバラードも、より味わい深いものとして迫ってくるのでは…

まだこの名曲をお聴きになったことのない方はぜひご覧ください。

28年前に収録された映像です。

オリジナル音源はこちら。